第12章 いつもの夜
影山 side
『っ…きてくれて、ありがとう』
1人が怖くて、泣きじゃくる美里。一体これのどこが欠点のない完璧な人間だというのだろうか。
でも俺は、どんなにありえないと思っても、どんなに勘弁してくれと思っても、震えながらギュッと腕にしがみつく美里を見てしまえば、無碍にこの腕を振り払うことなんか出来やしなかった。
「………」
ふと枕元を見ると、先程俺が渡したアップルティーが未開封のままで置いてあった。
「さっきの、飲まなかったのかよ」
『…うん』
「なんで」
『のめなかった…』
「お前それ好きだろ?」
『…影山くんがくれたから、』
「は?」
『これをお守りにして、頑張ろうと思った…』
「……バカだな」
そんなことを言われて、どこかむず痒さを感じてしまう自分自身も、こいつと同じくらいバカではないかと自虐気味にため息をつく。