第12章 いつもの夜
影山 side
「………」
消灯時間を迎えて30分。すっかり浅い眠りに入っていた俺の枕元でスマホが震えた。それも1度だけではなく立て続けに3度。眩しいスマホの画面を目を細めながら見ると、見慣れたLINEのアイコンだった。
…こいつ、マジか。
俺はため息をついて、ゆっくりと布団を出た。
寝息やいびきが木霊する真っ暗な部屋の中、襖までの途中で足が誰かの枕に当たる。
「…んぁ……?」
「……すんません、便所っス」
菅原さんに小声で謝りつつ、ようやく襖を開けて廊下へ出た。
音を立てないようスリッパを履かずに廊下を歩き、部屋の前について襖を開ける。立て付けが悪いのか閉めようとするとガタガタと音がした。バレたらまずい、そんなことは明らかで気力で半分のところまで閉めた。
部屋に足を入れると、こんもりと真ん中が小さく膨らんだ布団が目に入る。
…猫かよ。
掛け布団を一気に捲ると、丸まった美里は顔を上げて『わあ!』と大声を出した。
「バッ!」
俺は咄嗟に手のひらで美里の口を塞ぐ。
『ん〜んんん、んん〜!』
「いいか絶対に小声で話せ、わかったな?」
こくん、と頷くのを確認して俺は手を離す。すると美里は泣きそうな顔をして俺の腕を掴んだ。