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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第2章 白鳥沢受けることにした


随分奥の方に来ていたようで15分ほどして、ようやく校門が見えてきた。


『本当にどうもありがとうございました』

「気にするな」

『では、失礼します』

「待て」

『はい?』

「キミは白鳥沢を受けるのか?」

『はい、今日は願書の提出にきました』

「そうか。俺は2年の牛島だ」

『牛…』

「?」

『あっ、すみません…どちらかというと牛よりも馬のイメージで』

「初めて言われたが」

『走るフォームがとても綺麗で早くて、無駄のない筋肉だなと!って、こんなの失礼ですよね』

「別に構わない…変わった人だな、キミは」

『え』

「面白い、という意味だ」

そう言って牛島さんは、ふわっと品の良い笑顔で微笑んだ。
彫刻のような顔立ちで堅い雰囲気の人だと思っていたのに、笑うととても優しそうで素敵な人だなと思った。


「そういえば、キミの名前を聞いていなかった」

『私は鈴木美里といいます』

「……鈴木」

『はい』

「お前を白鳥沢で待っている」

『!』

「サポート程度でいい、またバレーしよう」



驚いて何も言えずにいると、遠くの方で牛島さんを呼ぶ声がする。


「俺もそろそろ行く、気をつけて帰れよ」

『は、はい!ありがとうございました』

「それと、鈴木」

差し出されたのは《白鳥沢学園 バレー部》と書かれた保冷剤だった。

「これで腕をよく冷やすといい」

『あ、ありがとうございます』

受け取ったそれはあまりに冷たくて12月には似つかわしくなかったけれど、気遣いが素直に嬉しかった。


「では鈴木、また会おう」

『はい牛島さん、失礼します』




牛島さんと別れてスマホを見る。

《影山飛雄 6件》


『やば…』

駅まで急ごうと走り出した瞬間、すれ違った人に「おい」と腕を掴まれた。顔を見ると、それはよく知った人物だった。

『か、影山くん!?どうして?』

「バカ野郎、どうしてもこうしてもねえだろ!帰るって言ってからどんだけ経ったと思ってんだよ」

『ごめん』

「電話も出ねえし…なんかあったのかと思ったろ」


鼻や耳が真っ赤だ、どれだけ待たせてしまったのだろう。


「ほら早く帰んぞ。腹減った」


さっきまで一緒にいた人と全然違うタイプだけど、飛雄の隣の方が落ち着くなと思った。
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