第12章 いつもの夜
『どしたの?』
「喉乾いた」
『あ、ごめん…料理の味濃かった?』
「いや、別にそういうんじゃねえよ。普通に喉乾いただけ」
『そっか』
「明日の朝飯?」
『うん、どうしようかなって悩んでたとこ』
おもむろに私のノートをパラパラと捲った飛雄は、あるページを指した。
「これ」
『あ、これ美味しいって言ってくれたね!』
「わざわざ覚えてんのかよ?」
『影山くんの反応が良かったレシピは、名前の横に花丸がついてるの。そうすればまた作ってあげられるでしょ?』
「…ほとんどついてんじゃねえか」
『それは影山くんがいつも美味しい美味しいって食べてくれるから』
「……」
私は料理を作り始める。
『ありがとね』
「なにが」
『私の料理が上手だと思うって、みんなの前で言ってくれたんでしょ?すごく嬉しかった』
「……」
『みんなに合わせて下手だって言えば良かったのに』
「言わねえよ、そんなこと」
『…っふふ、でも “いつも通り” には驚いたなぁ。嘘は言ってないけどさ』
「それは…食うのに集中してたから」
『うん、知ってる。私の作ったご飯を影山くんが一生懸命食べてくれてる姿を見るの、私好きだよ』
「……っ」
『だって嬉しいじゃん、作りがいがあるもん』
「…そーかよ」
そうこうしている間に1品目が出来た。