第12章 いつもの夜
冷蔵庫とその近くに置かれたダンボールを見て、思わず口角が上がる。扱いやすいからか、玉ねぎ人参じゃがいもは山のようにあるし、その他の葉物も豊富にある。しかも、お肉やお魚は合宿終了まで毎日持ってきてくれると聞いた。こんなにたくさんの食材を好きに使っていいだなんて、嬉しくて仕方がない。
『……ふふふ』
私は、これまでに作ってきたレシピと栄養素を纏めたノートを開いて何を作り始めるか悩んでいた。
「…何笑ってんだよ」
誰もいないはずの食堂で突然声がしたので、飛び上がるように顔を向ける。
『びっ……くりした、声かけてよ!』
「かけただろ」
『まって、…1人ですか?』
「ああ、じゃなきゃ声掛けねえ」
『たしかにそうか』
周りに誰かがいるタイミングで飛雄から私に声を掛けてくることはゼロに等しい。
パタパタとスリッパを鳴らして、飛雄が厨房に入ってきた。