第11章 烏野排球部恒例GW合宿
影山 side
『「あ」』
「ほら言わんこっちゃない」
「…これ」
『あ、うん…はいこれ』
「おう」
『なっ…な、なんでだろうね!?』
「…なんで、だろうな」
中身だけが違うということは、まず母さんの入れ間違いだろう。ただ美里は、それをもちろんわかった上で必死に表向きの言い訳を探しているように見えた。
「やっぱり王様のは鈴木のところだったんだ、朝練の時じゃないの?」
「『!』」
その月島の言葉に俺と美里は目を合わせる。
《それだ!》
『そうだよ、朝練!朝練の時だよ!影山くん!』
「っお、おお…そうか」
『朝練…あ〜っ、朝練だったかぁ!』
美里がわざとらしく“朝練”というワードを繰り返すと、辺りがザワついた。
「…鈴木さんが男バレのマネージャーになったって話マジなんだ」
「俺も思った」
「くっそ…サッカー部のマネが鈴木さんだった可能性もあるのかよ」
「うわー、もっと本気で勧誘すればよかった!」
聞こえてくる会話で、話が上手く逸れたのが分かった。心配そうにこちらを見つめる美里に小さく頷くと、パッと顔を明るくして体育着を抱き締めた。
『……じゃ、じゃあ着替えますか!』
「おう」
美里を軽く見送ってから教室のドアを閉めて振り返ると、すっかり着替え終わった同じクラスのヤツらから睨まれる。
「おい影山!お前なに普通に鈴木さんと会話してんだよ!」
「そうだぞ!いつもは女子に敬語なくせに!」
「…ってか、お前には杵島がいんだろ!」
「?…杵島さんは関係ねえだろ」
「はあ、杵島かわいそ」
「あいつほんと報われないな」
「…ところで王様」
「あ?」
「キミ、ずっと上半身裸だったけど大丈夫?」
「…………」
俺はガバッと体育着を着て、シャツを置いた席まで戻った。