第11章 烏野排球部恒例GW合宿
影山 side
『…どう、ここ気持ちいい?』
「あぁ…いい」
『もっと教えて…?こうして欲しいとか、もっと強くとか』
美里はマネージャーとして入部してから、こうして毎夜のように俺の手を実験台にテーピングとマッサージの練習をするようになった。部員のために早く覚えたいと、専門書を何冊も買って日々勉強している。
元々飲み込みが早く、要領のいい美里は上達が早い。
「親指と人差し指の間のとこ」
『あ、ここ?…飛雄は特に疲れてる場所だと思うんだけど、合谷っていうツボもあって首こり肩こり、頭痛、眼精疲労にも効果がある場所なんだよ』
「…すげえな」
『うん!すごいよね万能のツボともいわれてるんだって』
すげえってのは美里のことを言ったつもりだったのに、あまりに誇らしげにそう言うから俺はあえて言い直さなかった。
「…………」
痛くもなく弱くもない、本当に丁度いい力加減で的確な場所を押すもんだから俺の頭は段々とぼんやりし始める。
「…やべえ、美里」
『なに?どうしたの?』
「…ねみぃ」
『じゃあもう寝ようか、今日も練習に付き合ってくれてありがとう』
「………………」
ありがとうと言うのは俺の方ではないのか、そんなことを考えながら脳みそがシャットダウンしていく。
『飛雄、おやすみ』
足元の掛け布団を俺にかけてから美里が電気を消した頃には、俺はもう夢の中に肩まで浸かっていた。