第9章 “特殊”な私たち
月島 side
「なんでだろう、今日教室賑やかじゃない?」
「鈴木がいないからだと思う」
「えっ、鈴木?」
「なんか、他のクラスのヤツらは特に鈴木の前でいい顔しようとするじゃん。やたらカッコつけた話題出したり、スカしてみたり…女子も妙に鈴木を意識してる」
「たしかに、鈴木はクラスの守り神だったのか」
「守り神って大袈裟」
「…でもさ、鈴木って不思議だよね」
「なにが?」
「俺、鈴木を最初に見た時、クラスのマドンナとか高嶺の花っていうのはこういう子のことを言うんだろうなって思ったんだ」
「ああ、顔?かわいいよね」
「うん…えっ!?ツッキーもかわいいとか思うの!?」
「は?僕にだって一応人並みの感性はあるんだけど」
「わー…ツッキーがかわいいとか言ってるの初めて聞いた」
「そりゃキモいからいちいち言わないけど、清水先輩を見た時も綺麗だと思ったし、青城の及川さんを見た時も格好良いって思ったよ…あの人はムカつくけどさ」
「なんだ、ツッキーも俺ら庶民と感覚は同じなのか」
「…それ、僕嬉しくないやつ…ってか続きは?」
「ああ、鈴木ってすごくかわいいのにさ、近寄り難い雰囲気とか話しかけにくいオーラとか全くないじゃん?むしろ、人とのコミュニケーションがめちゃくちゃ上手で、鈴木のおかげでうちのクラスは派閥もなくて平和なんだと思ってるくらいだし」
「ほんと、コミュ力お化けだよね」
「俺、ツッキーをあんなにいじり倒す女の子、初めて見たもん。あとツッキーがクラスの中心にいるのも初めて見た」
「…そんなキャラじゃないから勘弁して欲しいよ」
「鈴木って顔がかわいいで有名だけど、中身も良いのになぁ…顔しか知らないやつ損してると思う」
「…お前、鈴木のこと好きなの?」
「いや?違うよ」
「違うんだ、すごい好きそうな語り口だったのに」
「俺は身の程を弁えてるんだよ、好きになっちゃダメなタイプだって会ってすぐに思った」
「へえ、そういうのって制御できるんだ…おもしろ」
教室側を見ていた僕は、気分転換に窓の外を目をやった。