第2章 白鳥沢受けることにした
『……っ、は、』
怖かった、
怖かった怖かった…
あの時は体が勝手に動いて、自分でも何が起こったのかよく分からなかった。飛雄が付き合えという時は今でもたまにバレーをすることはあるけど、突然あんなにやばいものが飛んでくることなんてこれまでになかった。
『…っ…あれ、ここどこだ?』
逃げるように走っていたら、広い敷地内で迷子になってしまった。スマホを探してポケットに手を入れると、
『……ない、嘘……ない!』
ふいに来た道を振り返ると、見覚えのあるフォームの人がこちらへ向かって走ってきた。…さっきの人だ。今度は邪魔にならないようにと道の端へ寄ると、その人は私の目の前で足を止めた。結構なスピードだったのに息切れひとつしていない。何かを確かめるように、じっと顔を見つめられる。背が高くて肩幅が広い。そして彫りの深い綺麗な顔立ちだ。
…じゃなくて!
もう一度先ほどの謝罪をしなくては。
『さっきはすみませんでした』
「先ほどはすまなかった」
『え?』
「ん?」
『なんですか?』
「なんだ?」
『…お先にどうぞ』
「…先に話してくれ」
『……あの』
「……その」
言葉を発する度に全て被るものだから、私はついに耐えきれなくなって吹き出してしまった。すると目の前の人は口元に手の甲を当てて少し恥ずかしそうな顔をした。