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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第2章 白鳥沢受けることにした


牛島 side


ロードワーク終わりのサーブ練習。
1球目は毎回必ず、その日の調子を見極める為に最大限の力で打つと決めていた。

高くボールを投げ、助走からジャンプを踏み切った時、ボール拾いの1年生が横切るのが見えた。


「!」



「おい、1年!あぶねえだろ!」
「す、すみません!」


腕をボールに向けて振り下ろしている最中だったこともあり、勢いをつけた体を止めることが出来ず俺の手のひらは大きな音を立ててボールを捉えてしまった。

わずかに振り下ろしのタイミングがズレたおかげで、狙った位置ではない方向へ飛んでいく。勢いを止めぬままに体育館の外へと飛び出したそれは、最悪な結末を迎えようとしていた。


ボールが女子生徒目掛けて飛んでいく。


チームメイトの叫びが先か、自分が駆け出すのが先か、焦りに心臓が急いた。すると、目の前でにわかに信じ難いことが起こった。なんと、その女子生徒は俺の放ったサーブの勢いを殺し、ふわりと空へと返したのだ。



「!?」



俺を始め、周りのチームメイトがその女子生徒へ視線を向ける。



『……っ』


その女子生徒は、まるで猛獣に追い込まれた小鹿のように怯えた目をして走り去ってしまった。女子生徒がいたであろう地面に目を向けると、スマートフォンが落ちている。彼女のものだろう。



「あっ、あの子落としてっちゃったんじゃない?」
「追いかけるか」


「…俺が行こう」

「若利くん?」



俺はシューズを脱いで、外履きに履き替え走り出した。
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