第9章 “特殊”な私たち
「なるほど…それなら確かにあの場で住所を書くなんて出来なかったよね」
『すみません…苦しい言い訳でしたが、日向くんに助けられました』
「影山も、鈴木さんを知らないって言ってたけどそういう理由だったんだ」
「俺は別にどっちでもいいんスけど、こいつが隠したいっていうんで」
「あれ、もしかして鈴木さんがバスの中で話してくれた、ずっとバレーをやってる幼なじみって…」
『あ…はい、影山くんのことです。本来なら避けなくちゃいけない話題だったはずのに、清水先輩と話していたらつい…』
「ふふ、またお姉ちゃんみたいだった?」
『!……はいっ』
「鈴木さんのお姉さん、影山はもちろん知ってるんだもんね」
「あ、それ俺の姉貴です」
「えっ?」
「…お前さ、ややこしい話すんなよ」
『ごめん……私には兄がいるんです。でも私にとってもお姉ちゃんはお姉ちゃんだから』
「へぇ、お兄さんもいるんだ」
『はい、どっちも9歳上で、もう家を出て東京で仕事してます。飛雄はお兄ちゃんとよく遊んでたよね?』
「………」
『なに?』
「名前、気をつけろ」
『…えっ!?うそ、ごめん』
「ふふ、聞いちゃった。普段はそうやって呼んでるんだ」
『…わぁあ、すみません。学校で影山くんとこんなに普段通りに話すなんて初めてのことで、学校じゃない感覚になってました』
「影山も名前で呼んでるの?」
「え?あ、ハイ」
「…美里って?」
「…………そ、っスね」
『影山くん、顔赤いよ』
「…っせえな、改めて言われると照れんだよ!」
「2人とも…これまでずっと周りに隠してきたことを私にも教えてくれてありがとう」
『いえ、清水先輩には知っていて欲しくて…これは私の我儘です。背負わせてしまったらすみません』
「ううん、すごく嬉しかったし、漫画のお話みたいでちょっとワクワクした。普段通りの姿も見れたしね」
ニコッと笑う清水先輩に、すごく嬉しくなる。
「よかったですね」
『はい!武田先生、本当にどうもありがとうございました』
「いえ、こちらこそ。鈴木さんのおかげで教頭先生のバレー部への評価は心配いらなくなりましたし!…それでは改めて、これからよろしくお願いしますね」
『はい、よろしくお願いします!』