第9章 “特殊”な私たち
教室に帰って、飛雄にLINEをする。
《お昼休みは国語科準備室ね》
なかなか既読がつかないところを見ると、朝練で疲れて寝ているのだろう。学生の本分は勉強だということ、すっかり忘れてるよね飛雄は。
「鈴木、おはよ〜!」
『あ、山口くん、ツッキーおはよう!朝練お疲れ様』
「昨日はびっくりしたよ、まさか鈴木が本当にバレー部のマネージャーになってくれるなんて!」
『あはは、練習試合観て感化されちゃって』
「…“こんちわッス”にも驚いたけどね」
『やめてよ、恥ずかしい』
「田中さんの甲子園も」
『もうそれはお願いだから忘れて』
「これから俺たち、ほぼ毎日朝から晩まで一緒だね!」
『そうだね、改めてよろしく!』
「山口、恥ずかしげもなくよくそんなこと言えるよね」
「え?俺変なこと言った?」
「いや、もういいや」
「そういえば、鈴木は帰り道に影山とどんな会話をするの?」
『え?…んー、どうだったかな』
「王様、女の子に慣れてないから何も話せないんじゃない?」
卒業式の日、女の子を前に困った様子の飛雄を思い出して私は思わず吹き出す。
『っ…そ、そうかもしれない』
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴って山口くんが席に戻っていく。私たちは机の上に1限の教科書を準備した。