第9章 “特殊”な私たち
次の日の朝、私は職員室で武田先生に声をかけた。お昼休みに清水先輩に話をする旨伝えると、先生も同席してくれることになった。
「このあと清水さんのクラスを通るので、お昼休みの件は僕から伝えておきますね。場所は国語科準備室でどうでしょうか」
『はい、どうもありがとうございます』
「はーい」
「武田先生、バレー部のヤツらは最近大人しくしているのかね?」
「あっ…教頭先生、はい…彼らにはキツく言って聞かせましたので」
「2年生だけでなく、1年も入部早々問題児で困ったよ全く…」
そうして教頭先生は私の顔を見て、微笑んだ。
「ヤツらにも鈴木さんを見習って欲しいものだねぇ、本当に」
「…ハハ」
『教頭先生、実は私男子バレー部でマネージャーをすることになりました』
「エッ!?」
『これまで教頭先生にはご迷惑をお掛けしたと聞いているのですが、教頭先生は懐の深い方なのできっと愛のあるご指導をされたのでしょうね。部員たちも、心から反省していました』
「あッ…懐が深いだなんて、ねぇ〜武田先生」
「鈴木さんの言う通りですよ!いやぁ、僕も教頭先生はさすがだなぁと思いました!」
「アララ……そう?」
『これからバレー部はもっともっと強くなると思います、もちろん応援してくれますよね?教頭先生』
「ま、まぁワタシも実は、そうなんじゃないかなと思っていたからね、陰ながら応援していたんだよ…だからこそ愛のある指導をね」
『そうでしたか、さすが教頭先生!』
「アハッ…アハハ、アハハハハ」
教頭先生は高笑いをしながら歩いて行った。
「……僕から言わせてみれば “さすが” は鈴木さんですが」
かく言う私は、飛雄の「中身見た」が頭をチラついて気を抜くと笑ってしまいそうだった。手のひらには爪の後がくっきりと残っている。