第9章 “特殊”な私たち
「ひとまず、部誌の緊急連絡先の欄は個人情報保護を口実に、僕が管理するように清水さんに提案してみようかと思います」
『………』
「鈴木さん?」
『…あ…えっと、』
私は清水先輩に対して嘘をつくことに、心が痛んでいた。清水先輩は、姉の代わりになれたら、と言ってくれたから。
「鈴木さん」
『はい』
「…清水さんなら、2人を茶化さずに受け入れてくれると思いますよ」
武田先生は私の心を読んだかのようにそう言った。
その通りだ。清水先輩はそんなことをするような人じゃない。それは分かっているのに、やっぱり少しだけ怖い。
「もちろん、無理にとは言いません。鈴木さんと影山くんの気持ちが1番大切なので。僕に伝えてくれたことも勇気のいったことだろうと思っていますから」
『…私、出会ってまだ2日ですが、清水先輩のことが大好きです』
「はい、彼女も同じだと思います。実は今日のお昼休みに、鈴木さんを勧誘するためにはどうすれば良いかと相談を受けましたから」
『本当ですか?それは嬉しいです…。今日影山くんに相談してみますので、明日改めてお話させてください』
「はい、もちろんです!いつでもお待ちしてますよ」
「大地、武ちゃんここにいた!先生、部活終わっ……あ、すみません話し中でした?」
菅原先輩が控えめに顔を覗かせたので、私たちは首を振って体育館の中へ戻った。