第9章 “特殊”な私たち
その日の帰り道。
「鈴木さん、昨日は帰り道大丈夫だった?」
菅原さんにそう話し掛けられた。
『帰り道ですか?』
「狼、いなかった?」
『あぁ!はい、いなかったですよ』
「影山、偉いな〜」
「……なんのことスか?」
「いや昨日の帰りさ、狼に襲われなかったか鈴木さんに聞いたの」
「働きません!」
「なんの話だよ」
あまりに真剣な顔で飛雄が不労宣言するものだから、私は可笑しくなって思わず笑ってしまった。
「影山、鈴木さんと少しは仲良くなれた?」
「なれてません」
「だ、だからお前はなんでそういうことをわざわざ本人の前で!」
『大丈夫ですよ、本当に少しも仲良くなれてないので』
「鈴木さんも!…でもあれでしょ?同中なんだから共通の話題とか知り合いとかいるっしょ?」
「いましたよね?あの、なんか無気力ボーイみたいなヤツ」
「あぁ、いたいた!鈴木さんに話しかけてた人!」
『…国見くん、ですね』
「共通の知り合いはいますけど、俺別に仲良くなかったんで盛り上がったりできません」
「……さすが王様」
「んだと、てめぇ!!」
飛雄はわざと国見くんの話題を避けるように、話を切ってくれた。気を遣わせてしまって申し訳ない。