第9章 “特殊”な私たち
「西谷さん!」
「西谷ー」
ツンツンとした髪型で前髪の色が派手な人が部活着で入ってきた。日向くんや菅原先輩が駆け寄ってくる。バレー部の人かな…そう思って見ていると目が合ったので私はぺこりと会釈した。
「………ん?」
小さくそう声を発したと思ったら、その人は突然バタンと倒れ込んだ。
「に、西谷さんが死んだ!!!!」
なんだかものすごいデジャヴ。
「ノヤっさん……起きろい」
「り…龍……こいつァ…一体どういうことだ」
「ついさっきのことだ…俺たちのミューズが増えた」
「!……ってことは、マ…マネ……」
「ああ、そうだ。新しいマネージャーだ」
「なんだと!?」
「…“1年の鈴木さん”」
「聞いたことあるぜ…だがそれとなんの関係が?」
「聞いて驚け、……本人だ」
「な……なんだってェ!?」
するとその人は目にも止まらぬ早さで起き上がると、私の目の前に駆け寄ってきてジッと見つめてきた。
『こ…こんにちは』
「……龍、」
「どうしたノヤっさん」
「こりゃ…モノホンじゃねえか」
「そう言ったろ」
「失礼お嬢さん、あなたはメデューサか何かですか」
『……えと、人間です』
「俺は石のように固まって貴女から目が離せない」
「ノヤっさん!」
助けを求めるように比較的近くにいたツッキーを見ると、音速で目を逸らされた。
こちらに気づいた清水先輩がその人の頭をファイルで叩くと、嵐の矛先は清水先輩へ向いた。
「おい、西谷。鈴木さんが困ってるだろ」
「そうだぞ、挨拶しろよ」
澤村先輩と菅原先輩の声に再度こちらにやってきた。
「はっ!…俺は2年の西谷夕だ、よろしく頼む」
『1年の鈴木です、西谷先輩よろしくお願いします』
「ッハハ、なんだよよろしく頼むって!かっこつけんなよ」
「なっ!つけてないッスよ!」
「つけてんだろ!」
「つけてないって!」
バーッと2人は走り去ってしまった。
「とても賑やかですね」
『そうですね……あ、武田先生、今少し相談したいことがあるのですがよろしいですか?』
「もちろんですよ、なにかありましたか?」
『ここだとあれなので…外でも良いですか?』
「あぁ、わかりました」
私たちは体育館を出て、端に寄った。