第2章 白鳥沢受けることにした
「…っと、すまない」
振り返るとその人は既にいなくてぐるっとその場で一回転すると、学校の門の中を走る背中が見えた。
軽やかなステップに美しいフォームで颯爽と駆け抜ける姿に思わず見惚れる。肩に触れた大きな厚みのある手の感触を思い出す。
『……あっ、』
もしやあの人は、門の真ん中で立ち止まる私にぶつかりそうになって避けてくれたのか。それは大変に申し訳ないことをしてしまった。
『邪魔してしまってすみませんでしたァ!!』
私が後ろ姿にそう叫ぶと、応えるように左手が上がった。
『はっ!…やば、願書』
《一般入試出願受付はこちら》と書かれた看板を見つけて、ようやく歩き出す。受付窓口は少し混み合っていて、自分の受付が完了したのは並び始めてから30分くらい経った頃だった。