第8章 決意のスタートライン
『飛雄はさ、私がマネージャーだったらどう?』
「別に今となんも変わんねーよ、やることやるだけだ」
『そう言うとは思ったけども…やりにくくなったりしない?』
「あ?俺が誰かの影響でバレーやりにくくなるような人間だと思うのか?」
『思いません、少々自惚れてました』
「だからこそ、美里がやりたいのかやりたくないのかで決めたらいいだろ」
『うーん…そうだよね』
「どこをそんなに悩んでんだ?」
『マネージャーをするとして、将来の役に立つ何かを学べるのか、やってよかったと思える何かを得られるのか、限りある時間をそこに費やす意味があるのか…とか』
「かてぇな」
『…たしかに、今自分で言っててもかてぇなと思った』
「頭良いヤツの言ってることはよくわかんねえ」
『飛雄ちゃん、おバカだもんね』
「それなんか色々すげえムカつくからやめろ」
『ごめんごめん、ちょっと出来心』
「そもそも、お前の言う将来ってなんだよ」
『夢というか、こうなっていたいなっていう未来かな』
「具体的には?」
『…前に宣言しちゃったから、もう隠さないで言うけどね。私、通訳士と公認スポーツ栄養士になりたいの』
「……なんだって?もう1回」
『だから、通訳士と公認スポーツ栄養士!』
「何する人なんだ?」
『はあ…飛雄は将来世界を相手にバレーするでしょ?なのに英語がてんでダメだからその通訳、それとスポーツ選手は健康な身体が資本だから、最適な栄養素の食事で身体作りと健康をサポートをしたいの』
「お前それ…………」
そこまで言うと飛雄は、顔を両手で覆って下を向いたまま動かなくなった。
『飛雄?』
「……ハァー…」
『なに、だめだった?』
「……いや」
『じゃあ何?嬉しい?』
「……ま…だろ」
『えっ?』
「…当たり前だろ!」
『ふふ、よかった!じゃあがんばる』