第8章 決意のスタートライン
ベッドの上に座りボールでハンドリングをしている飛雄。私はそれをその横に寝転びながら見ていた。
『ボールはともだち、こわくないよ』
「は?」
『キャプテン翼』
「あれはサッカーだろ」
『そうだよ』
1分、1秒………
私は起き上がり、飛雄と向き合った。
『…飛雄、相談してもいい?』
「ああ」
『マネージャーの件ね』
「わかってる」
『ありがと』
「率直にお前どう思った?」
『試合を観て?』
「おう」
『そうだね…運動神経で殴ってる感じだった』
「…は?もうちょい」
『青葉城西はチームで戦ってるように見えたけど、烏野は個々が攻撃してる感じ?運動神経っていうのは、まぁ主に日向くんのことだけど技術じゃない生まれ持ったもので戦ってるように見えたかな…ツッキーの身長もそうだしね』
「ん」
『攻撃はある程度出来ても、技術の必要な守備は穴が目立つから失点が多いのかな…田中さんがメンタル強そうだから表向きはチームの精神が保ててるように見えるけど、守備の失点ってわかりやすく本人のメンタル削られるから心配だな…とか、外野が偉そうに言ってごめんね』
「いや、その通りだと思う。及川さんも言ってたけど、やっぱりレシーブ力の底上げができなきゃ勝負になんねえんだよな」
『青葉城西は特に北一時代の連携がそのまま生かせるから0からスタートのチームじゃないし、対して烏野は今が土台作りでこれからのチームだよね。…でも今日総合して1番感じたのはね、飛雄のすごさだよ』
「……なんだよ」
『飛雄よくセッターは司令塔だって話してたじゃない?あれがすごく腑に落ちた。敵味方関係なく、コート全体を把握してどこにどんな攻撃が最適かをスパイカーたちに示してて、ゲームの支配者だなと思った。中学の時よりも、イキイキしてた!』
「へえ、中学の時な?…お前よく知ってるじゃねえか」
『あっ…その節は大変申し訳ございませんでした…』
「んなコソコソしなくたって、来たきゃ来たいって素直に言えば良かったじゃねーかよ」
『最初に来ないでって言われたからさ、言い出せなくて』
「なんだよ、グラさんって」
『私が聞きたいけどね、それは』
「あん時、何でサングラスなんて持ってんだとは思ったけど、まさかな」
『ああ…飛雄が泣いちゃった時ね』
「泣いてねえ」