第7章 再会
「自己紹介まだだったよね?俺は、及川徹…呼んでみて?」
『及、川さん…っ…ちか…い』
「ふふ…照れちゃったの?か〜わいい」
大きな左手が右頬を滑って、そのまま私の耳を撫でた。
『……ひ、っ』
「男の人とこういうことしたことないの?」
『な、ないです』
「じゃあ美里ちゃんはさ…キスもしたことないの?」
『キス…?』
「キスはねぇ…俺のこれと、美里ちゃんのこれを合わせること…」
及川さんは自分の唇に触れて、その指で私の唇に触れた。それもわざとゆっくりと意識させるように。
『ん、……っそれは、知ってます…けど』
「けど、ないの?」
私はコクンと頷いた。
「そっかぁ…じゃあ美里ちゃんのファーストキスは、俺だね」
『…えっ?』
「俺、あの日に一目惚れしちゃったんだ…美里ちゃんは泣いてたけど、涙がキラキラしてて宝石みたいだと思った」
髪をさらりと撫でられたかと思うと、及川さんの目は一瞬獲物を狙う獣のように鋭く光った。
「俺は心を奪われちゃったからさ……美里ちゃんの大事なもの奪っても、いいよね?」
『そ……そんな、まって……だめっ!』
「…大丈夫だよ、気持ちいいから」
元々近かった距離、
ゆっくりと近付いてくる唇。
『……っ』
いやだ、ファーストキスをよく知らない人とするなんて。そう思うのに私の体はピクリとも動かなくて、目をギュッと瞑ることしかできなかった。
もう少しで唇が触れてしまう、
そんな時、突然目の前の及川さんが後方へよろめいて私たちの間に距離が出来た。
「…ッ…なに、してんスか」