第12章 ぼんさん宅の守護霊
その後、私はぼんさん宅へ向かった。どうやらまた、ぼんさんのPCの調子が悪いらしい。
メカニック担当臨時スタッフの私だが、徐々にその力が認められ始めて、こうして一人で実況者たちの機械メンテナンスに行くようになっていた。とはいえ私がぼんさん宅へ一人で行く理由は、アレしかないのだろうが。
少しの不安がありながらも、ぼんさん宅に向かうと特に言葉もないまま中に通してくれた。お邪魔します、と入ったぼんさん宅内は一見変わった様子はない。
「アナタが来たってことは、まさかまた、幽霊?」
怯えたような目を向けられる私。恐らくここに自分が派遣されたのはドズルさんからの配慮もあるのだろうが、私は視えるだけでどうとなる訳でもないので曖昧な返答しか出来なかった。
とりあえずぼんさんの機械類やPCを点検してみることにした。
「パソコン見てみますね」
「はーい」
なんでも、急に動作が出来なくなったとのことでパソコンのあちこちを確認していると、視界の端で何か見えた気がした。
私が素早く振り向いたからだろう。ぼんさんがどうしたの、と聞いてくる。
「いや、あの……」ぼんさんの家にコレがあったんだっけ?「自動掃除機買ったんです?」
「え、買ってないけど」
ドキリとした。まさかそんな、そんなものを視るなんて……。
私は恐る恐る足元に徘徊するものをよく見てみた。
丸くて平べったいもの。色は黒で、ぼんさんの床を掃除するように、家具や私たちの足を器用に避けて掃除をしている……つまり私は、ロボット掃除機を視ていたのである。幽霊の。
私があまりにも変な顔でもしていたのだろう。ただごとではないと思ったぼんさんが、私にそっと聞いてきた。
「なんかあった?」
私は深呼吸をし、幽霊ロボット掃除機から目を離せないまま正直に答えることにした。