第4章 轟焦凍
放課後、帰り支度を整えていつも一緒に帰る焦凍の席へ正面から近寄る。
『しょう.......と...?』
近づく私に気づいたのか焦凍と目が合った。けれど伏し目がちに逸らされ焦凍の双眸は二度と私を見ることなく、席を立ち教室から出て行ってしまった。
誰に届くこともない焦凍を呼ぶ自分の声を聞いた。
焦凍に避けられた。
胸が苦しくとなると同時に、自分は今日1日ずっと焦凍に同じことをしていた、焦凍は今日1日ずっとこんな悲しい気持ちだったのかもしれない、そう思うとひどく胸が締め付けられた。
全部自分が撒いた種なのに。
重い足取りで寮へ帰った。
共有スペースで、貰ったバレンタインの数で盛り上がる男の子たちを横目に焦凍の部屋へ駆けた。
ちゃんと焦凍に謝ろう。
焦凍の部屋の前でふぅ、と一息つく。ドアをノックしようとした手は何にも触れることは無かった。ドアが開いたからだ。
「お、」
『ぁ......焦凍...私、焦凍とお話がしたくて』
ドアの前に立っていた私に一瞬驚いた表情を見せたあとに、気まずそうに逸らされた視線。もう1度私に視線が戻ると焦凍が口を開いた。
「......とりあえず、中入れよ」
首を縦に振り部屋の中へ促される。
焦凍のお部屋に入ると、畳の匂いと大好きな焦凍の匂い。この匂いが好き。
「...もう、俺のこと嫌いになったのか?俺、お前と離れたくねぇ。」
私に背中を向けたまま静かな声で呟く焦凍。
『ちがうの...ッ...。焦凍、ごめんね。私、チョコ持ってきたとか言って......嘘、ついたの。本当は、持ってきてなくて...っ...本当の事言い出せなくて、ずっと避けてた.....ごめんなさい...ッ』
「......それも、嘘...なのか?」
こちらをゆっくり振り返り、嘘と言われてチクリと胸が痛んだ。けれど最初に嘘をついたのは私なんだから疑われるのは当然で。