第4章 轟焦凍
ご飯を食べ終わった机の上で突っ伏してあれこれ考えてると徐々に教室が賑わい始めた。
食堂組が戻ってきた。
「ちゃん、轟くんと何かあったん?」
『え、なんで......』
突然お茶子ちゃんから、焦凍の名前を出されて心臓がどきりと音を立てた。
「だっていつもちゃんも一緒に食べるのに、食堂におらんかったし。轟くんも元気なかったし、話しかけても上の空で...」
あぁ。きっと私のせいだ。焦凍の悲しそうな顔がすぐに想像できた。本当のことを話してちゃんと謝ろう。
『そ、なんだ...焦凍はいまどこにいる...?』
「さっき相澤先生に呼ばれてたから、もうすぐで来ると思うんやけど」
『そっか、ありがとう。』
もう一度机に突っ伏してから、発目さんから頼まれていたものを思い出した。自分の席に座っていた緑谷くんの元へ行き声をかけた。
『緑谷くん、これ』
発目さんから預かってたサポートアイテムを渡すと、目をキラキラ輝かせる緑谷くん。
「わぁぁ!頼んでたアイアンソール!さすが発目さんだ....ッ、」
『あと、これも。日頃の感謝って。』
「そんな!僕の方こそ発目さんに感謝しなきゃいけないのに....ッ...!わざわざありがとう!さん。」
『いえいえ』
もう1つ渡された小さな袋を渡すと発目さんの策略、とは知らずに純粋に顔を真っ赤にさせて嬉しそうな緑谷くん。
私も焦凍に渡せてたらこんなふうに笑ってくれたのかな、と思うと自然と笑みが溢れた。
自分の席に戻ろうとしたところで、不意に強い視線を感じた。それはドア付近に立っていた焦凍のもので。
左右で色の違う双眸を大きく見開いた焦凍と視線がバッチリ合った。でもその表情はひどく悲しそうな子犬のようにも見えた。そして視線は逸らされた。
ずっと避けてごめんね、嘘ついてごめんね
焦凍に謝ろうと踏み出そうとした足は、私たちの仲を引き裂くようにして鳴った、次の授業を知らせるチャイムの音で踏みとどまってしまった。
焦凍に話せないまま残りの授業を受けた。
このまま一生授業が終わらないのではないか、と不安になるほど長い時間が経過した錯覚に襲われた。