第4章 轟焦凍
教室に着いてからはひたすら焦凍を避けた。
授業の合間は焦凍が私の席に近づく度に音を立てて椅子から立ち上がり逃げるようにして廊下に出た。
ごめん焦凍───
お昼ご飯はいつも、焦凍や緑谷くん、飯田くん、お茶子ちゃん、梅雨ちゃんとわいわい話しながら食べるんだけど、今日は一人で教室で食べた。
ごめんね焦凍───
1人ぽつんと教室で食べるご飯。1人で食べることがこんなにも寂しいだなんて。
時間が経てば経つほど焦凍に本当のことを言いずらくなるのは分かってるのに、嫌われてしまうんじゃないかと言う恐怖が、私を覆っていく。
「おや!!さんが1人だなんて珍しくないですかぁ?」
突然、活発な声が聞こえてきた。ドア付近を見ると教室を覗く発目さんが立っていた。
一度緑谷くんの紹介で、サポート科の発目さんに私のヒーローコスチュームの強化をお願いしてから、それ以降私も発目さんにお世話になっている。
『発目さんどうしたの?教室に来るなんて珍しい。』
「実は実は!!緑谷くんに頼まれてた新しいベイビーを持ってきたのですが、いないようですねぇ?」
『緑谷くんなら、多分まだ食堂でご飯食べてると思う。私から渡しておこうか?』
「じゃあ、お願いしてもいいですかぁ?説明書は中に入ってるので!あ!!」
これもお願いします、と言って渡されたのは丁寧にラッピングされた小さな袋。
『これも、サポートアイテム?』
発目さんから受け取ったものを見て質問した。
「いえ!今日はバレンタインなので!日頃の感謝を込めて!こういう地道な積み重ねがデカい企業への近道......く...ッふふ...」
後半、発目さんの心の声がダダ漏れで苦笑する。
『わかった、これも緑谷くんに渡しておくね。』
「よろしくお願いします!!では!私は新しいベイビーの開発で忙しいので!失礼しまーす!!」
嵐のように来て嵐のように去っていった発目さん。しんと静まり返った教室で今受け取ったものを見る。
本当なら私も焦凍に......。
私には訪れない現実に胸が痛んだ。私が悲しむ筋合いなんてないのに。
朝話したきり焦凍とは話してない。私が避けてるからそうなるのは当たり前なんだけど。焦凍怒ってるかな……。