第4章 轟焦凍
「おはよ。の手作りの本命チョコが欲しい」
『えっ!!!』
「轟、お前それ自分から言っちゃうのかよ!!!」
「ん?ダメなのか?」
登校して、開口一番に彼氏である轟焦凍にいきなりそんな事を言われて肩を揺らした。隣で聞いてた峰田くんもびっくり。
けれど、きっと峰田くんと私が驚いた理由は違う。
今日はバレンタイン。好きな男の子にチョコレートをあげる日に私はそのチョコレートを持ってきていない。正確には持ってこれなかった。
なぜなら───
私は料理が大の苦手だった。それでも昨日夜遅くまで一生懸命作ったんだけど焦がすわチョコレートを湯煎中にお湯が入り込むわ、分量を間違えるわで全て失敗。
市販のチョコレートを買いに行く時間もなく今に至る。
クソリア充め、と泣き叫びながら教室へ向かった峰田くん。今だけは峰田くんの背中を追いかけたくもなる。焦凍と2人きりがしんどい。
『お、おはよ焦凍!ッ...チョコね!あとで!教室行ったらで良い?』
「あぁ。楽しみにしてる。」
彼女なのにバレンタインを持ってきてない事に嫌われてたくなくて咄嗟についてしまった嘘。嘘をつくことの方が嫌われるのは分かってるのに。
楽しみにしてる、と言った焦凍の優しい笑顔が心の底から本当に楽しみにしているようで、ますます本当の事が言えなくなっちゃう。