第2章 出会い、非日常が日常へ
ジェイムズのオフィスを後にした稜華達は資料室にたどり着いた。
ジョディが資料室のドアをノックする。
「シュウ、居るの?入るわよ」
「さあ、ドアを開けて」と言われてドアノブに手をかける。
気が重い所為か、ドアノブまで重たい気がする。
重たいドアノブを回し部屋に入ると、タバコの香りと仄かな香水の香りがフワリと鼻を掠める。
「なんだ、居るじゃない。って、資料室でタバコはやめて頂戴。火事にでもなったらどうするのよ」
「取り込み中だ。何か用か?」
無愛想に返事をしたニット帽の男と目が合う。
『はじめまして、本日よりこちらに所属いたします。白鷹稜華と申します。宜しくお願いいたします』
「赤井だ。同じ任務をすることがあれば宜しく頼む」
赤井と名乗った男はちらりと稜華の方を見るが、直ぐに手元の資料に視線を戻す。
『現場も担当する所属ですので恐らく同じ任務に着く場合もあるかと思います』
「…ほー、それはそれは。楽しみにしている」
互いに顔色も声色もワントーンで意図せずピリつく空間。
⦅あー、こんなちんちくりんと任務を共にする事はない、とでも言いたそうな雰囲気じゃない、ってか挨拶に来た相手をタバコ片手間で返事するなんて…。ムカつく、不快⦆
(何か言いたくて堪らないという顔だな。これだから年下の女はなにかと面倒だ)
((こいつとは一緒に仕事したくない…))
「お取り込み中失礼しました。では」
そう言い残し稜華は足早に資料室から出て行った。
「シュウ、ここ数日あまり休んでないんじゃない?根詰めすぎはダメよ」
そう言い残し、稜華の後を追う様にジョディも資料室を後にする。
残された赤井は溜め息を吐くかの様にタバコの煙を吐いた。