第2章 出会い、非日常が日常へ
午前0時12分 オフィス。
稜華のオフィスには相変わらずキーボードを叩く音が響き渡る。
FBIとしてアメリカに来て2日目にして帰宅を諦める程任務に追われていた。
『っあー…、流石国際犯罪組織。覚悟はしてたけどデータ量が膨大すぎる…。でも後少しだし、今日ジェイムズさんが居る間には完了報告をしたいな』
煌々と光るディスプレイと睨めっこし続け疲れた目をギュッと閉じながら背伸びをする稜華。
『日付も変わっちゃったし、一旦シャワー浴びて眠気覚まそう』
そう言って、日中買い回った荷物を漁り始める。
『キャメルさんお手隙で本当に良かったー。買い出し行けてなかったら着替えもなにもなかったし』
着替えやタオルなど必要なものを取り出し、トートバッグに一纏めにしシャワー室へと向かった。
午前0時17分 資料室。
赤井は資料を捲る手を止め、窓際へと向かう。
春先とはいえ、この時期の深夜の風はまだまだ冷えるなと思いながらタバコに火をつける。
フル回転させ続けた頭を休めていると、ドアの向こうから階段を歩く足音が聞こえてくる。
「こんな時間まで残ってる奴が俺以外にも居たのか…」
ふと、昨日初めて顔を合わせた稜華の顔が浮かぶ。
「いいや、まさかな。もう一通り資料を見たら、コーヒーでも取りに行くか」
タバコの火を消した赤井は再び資料の山へと視線を向けた。