第1章 非日常、幕開け
『ざっくりって…。そんなアバウトな…』
ジョディとの会話の間にある程度ハッキング環境は整えた。
『とりあえず大まかなデータベースだけ見てみるか』
そう言って稜華はキーボードを叩き出した。
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どれくらいの時間が経過しただろうか。
相変わらずオフィスには規則正しくタイピングの音が鳴り響く。
数々のディスプレイに不規則に視線を移しながらタイピングを続ける稜華。
ふと、今までより強めにキーボードの音が鳴り響く。
それと同時に稜華は大きなため息と共にディスプレイから視線を外し、大きな椅子に沈み込む。
『…あー、しん…っど。眼鏡くらい荷解きして任務進めればよかった』
視力は人並み以上な稜華だが、ハッキング中は少しでも目を労われるよう、ブルーライトカット効果のある眼鏡を愛用している。
稜華は眉間を解しながら、椅子に沈み切った身体を起こし立ち上がる。
『ジョディさんに報告の電話して、あー、後挨拶にも行かなきゃ』
そう言ってデスクの上に置かれたスマホを手に取る。
「Hi、任務は終えたかしら?」
『大元のデータベースだけですが、一通り確認しました。ですが、もう少し細かく見る必要があるかと思います』
「OK、そっちは明日でも構わないから切り上げて良いわ。カフェテリアにいるからそこまで来てくれる?」
『わかりました。すぐに向かいます』
報告の電話を終え、カフェテリアの場所を聞くのを忘れたなぁと思いながら、稜華はオフィスを後にした。