第1章 非日常、幕開け
アメリカ某所。
日本とはまた違う強い日差しから逃げる様に稜華は建物の影に避難し、とある人物を待っていた。
『金髪のショートヘアで眼鏡を掛けた女性の捜査官…』
周りの視線を少し気にしながら辺りを見渡す。
ふと、待ち合わせの人物を同じ様な身なりでこちらに向かって歩いてくる女性を発見した。
発見と同時に女性もこちらに視線を合わせていた為、すぐに気づいたのか笑顔で軽く手を振られた。
「Hi! Nice to meet you! 貴女が稜華ね?」
『はい、白鷹稜華です。スターリングさん…ですよね?』
出会って早々、熱烈なハグと挨拶に戸惑いながらも自分の名を名乗る。
「ジョディでいいわよ、稜華。これから一緒に過ごすんだから。さぁ、あっちに車を停めてあるから行きましょう」
ジョディに案内され、稜華も後を追う様に歩き出す。
『ジョディ、さん。今から向かうのって…』
「勿論FBI、連邦捜査局よ。これから任務を共にする私の仲間たちに稜華を紹介しなくっちゃ」
さあ、乗って。と車の助手席に案内され、車へ乗り込む。
目的地へと走る車内では他愛もない会話が繰り広げられていた。
「アメリカは初めて?」
『はい。こんな機会がなければ多分訪れる事もなかったかと思います』
そう。
私はつい数週間前までは日本で平凡な生活を送っていた一般人だ。
「ハッキングスキルに狙撃、体術。よくもまあジェイムズもこんなすご腕をみつけてきたもんだわ」
『狙撃はそんなに秀でてないですし、体術に至っては本当におまけ程度ですよ』
ジョディの言う通り、私のハッキングスキルに目を付けたジェイムズによってFBIへの配属が決まったのだ。
それまでは大学を卒業し、とある会社のエンジニアとして日々仕事に勤しんでいた。
ハッキングについては趣味のつもりで手をつけたのだが、いつの間にかその範囲に収まらない程のものになってしまっていた。
「独学でジェイムズに目を付けられる程のスキルを身につけるなんて、これが才能ってやつなのね」
ジョディの運転する車はとある建物の敷地内に入っていく。