第2章 出会い、非日常が日常へ
『何か御用ですか?』
首だけで振り向くと、コーヒーを片手に椅子に座る赤井がトントンと向かいのテーブルを叩く。
⦅座れってこと?⦆
『すみませんが途中の任務に戻りたいんですが…』
「その任務について聞きたいんだ。少しだけ付き合ってくれ」
それを言われては断れない。
そう思い、大人しく赤井の向かいの椅子に腰を掛ける。
『それで聞きたいことって何ですか?』
「任された任務の詳細が知りたくてな」
『黒の組織のデータベースへのハッキングです。これから実行されるサイバー犯罪の情報をハッキングし、先手を打てる様にとの事です』
「なるほど、君はハッカーとしてここに来たのか。ホークアイとはそういう事か」
『ホークアイ?どういう事ですか?』
「お前はここに来る前から度々FBIの中で話題に上がったいたぞ。ジェイムズが”鷹の目”と呼ばれる女を連れてくる、と」
初めて聞く情報に少し驚く。
FBIに来る前から既に二つ名が付いているとは思いもしなかった。
「どんな女が来るのかと思っていたらこんな少女みたいなのが来るとはな」
『24です』
微かに笑う赤井に被せる様に即答する稜華。
『24歳か。確かに若いな。だがもう少し若く見えるな』
「聞きたい事はもう無いですか?オフィスに戻ります」
椅子から立とうとする稜華に、「もう1つ」と言う赤井。
「これは余談だが痕跡を残さず奴らのデータベースにハッキングが可能なのか?」
『痕跡を完全に消せるハッキングはありません。勿論気づかれない様、ハッキングした痕跡を消す方法はあります。ただそれも、私より上手のハッカーが組織に入れば見つかってしまうかもしれません』
そう言うと稜華は立ち上がり、一礼してカフェテリアから出て行った。
「あいつのハッキングスキルはきっと超人レベルなのだろう。それ故の”鷹の目”、ホークアイか」
残ったコーヒーを片手に赤井も資料室へと戻って行った。