第24章 伝える
たしかに好きだ。
私は、影山くんのことが大好きだ。
けれど影山くんの言う"好き"は、
嫌いの反対の "好き" で、
バレーが "好き" 、食べることが "好き" 、
全人類に対して使う"好き"だ。
私の言う "好き" は、
特別で、大きくて、温かくて、
人として、男の子として、友達として、
ぜーーんぶをまとめて掛け算をしたような
この世で影山くんにしか言えない "好き" だ。
そんな小さくて大きな齟齬を、私は思い切って訂正できるほど、
私にそんな勇気はまだない。
だから私は、小さな勇気を振り絞って言う。
「…そうだよ、影山くん」
「おう」
「…わ、私、影山くんのこと、
……す…っ、好き、だよ!」
もちろん、トクベツな "好き" だよ。
…なんてことは言える訳もなく、
その気持ちは言葉の奥に隠して込めた。
ひっくり返りそうな声でそう言う私の姿は、
きっと、耳まで猿のおしり色だ。
そんな私の勇気の一声を聞いて影山くんは答える。
「……お、おう」
(やっぱし届いてないっ!!)
影山くんは言葉の奥の気持ちなんて気が付いていないだろう。
……まぁ、期待はそんなにしていなかったけれど。
恥ずかしさと悔しさで、
私はトホホ、と影山くんから顔を逸らした。