第20章 これから
この言葉の意味は、
「言っていいよ」ではない。「言え」だ。
でもこれは、私を困らせたいから言っているのでは無い。
きっと、困っている時に助けたいから言っているんだ。
命令であることを理解しながらも、私はその言葉の奥にある影山くんの優しさに気が付いた。
「うん…!」
そう返事をすると、影山くんは満足気に口角を上げた。
その後、影山くんは部活へと向かった。
私は1人教室に残っていた。
うるさい心音を落ち着かせようと深呼吸をしたとき、ドアからガタッと音が鳴った。
ビクッと肩を揺らしてドアを見ると、そこには顔を赤らめた仁花が立っていた。
「ひ、仁花!!?いいいつからそこに!?」
「えっと…その……
……がサッカー部の人に捕まってる時…。」
「へっ!?」
「ごごごごめん!盗み聞きするつもりはなかったの!!!」
顔を赤らめながら謝る仁花。
つまり一部始終すべて見られていたということだ。
ということはまさか…
「勉強しようと思ってを呼びに来たらもう絡まれてて、どうしようって悩んでたら影山くんが入って行って…、そ、それで………」
やはり影山くんの言葉も全て聞かれている。
仁花の言葉で影山くんに言われたことを思い出した私は、
照れと恥ずかしさで顔がリンゴ色に染まった。
失神しかけた私を慌てて仁花が支えた。
「…!」
仁花が声をかけたが、私は魂が抜けたような顔をしていた。
「…っ、ーーーーー!!!!」
そう叫ぶ仁花の言葉も届かず、私は
「影山くんが1匹…、影山くんが2匹…、影山くんが3匹……」
と唱えるのみだった。
それを見た仁花は自分を責め、
「私が…盗み聞きなんてしたから……、私はなんてずるくて小汚い、性悪で小心者で社会に不適合………」
とポソリポソリと呟いていた。
私と仁花の2人しか残っていない教室で、響く音は
「影山くんが10匹…、影山くんが11匹…、影山くんが12匹……」
「私は社会不適合者…私は社会不適合者…、私は社会不適合者…」
この声のみとなった。