第19章 憧れ
「!」
『昨日俺は負けた。チームとしてもセッターとしても、青葉城西に…、及川さんに、負けた。』
その言葉にチクリとしながらも私は相づちを打つ。
「…うん。」
『けど、昨日の試合は無駄じゃねーんだ』
『昨日の試合で、今の自分の限界も、このままじゃダメだっつーことも気がつけた。
まだどうやって超えて行けばいいのかはわかんねーけど、練習して強くなって俺はもっと上にいく。』
『俺はもう負けねェ。』
そう言った影山くんの声には、後悔の色は無かった。
「…うん!」
『それに、………。』
がんばれ!なんて気持ちを込めて精一杯返事をすると、影山くんはごにょごにょと何かを言った。
「え?なにー??」
『……ンでもねぇよ!!!じゃあな!』
ツー ツー ツー
「…え?」
要件だけ言って急に切られた。
なんだか怒られてたような気がする…。
でも、影山くんが前を向けたみたいで嬉しいな。
「…ふふっ」
突然始まって突然終わった通話だったが、2泊3日の旅行をした程に充実したように思えた。
音符が飛びそうな程に上機嫌なまま明日の支度をしようと立ち上がると、鼻の奥に違和感を覚えた。
つぅーー……
「へ?」
鼻を拭ってみると、手には血痕が残った。
違和感の正体は鼻血だった。
原因は間違いなくあれだ。
「こ、興奮しすぎた……」
こんなの誰にも言えない。
そんなこと思いながら私は慌てて止血をしたのだった。