第19章 憧れ
教室に入りいつものように席に座り、いつものように荷物を整理していた。
すると、いつもとは違う出来事が起きた。
ガタンッ
音のする方を見ると、斜め前の影山くんの席に、影山くんが着席をしていた。
いつもだったらまだ来ていない時間なのに。
今日いつもより早い!おはようって言えなかった!!
…あ、そうか。昨日は試合だったから朝練お休みになったのか。
影山くんの悲しそうな背中を見て、私はキュッと胸が苦しくなるのを感じた。
きっと彼はまだ前日の敗北を消化しきれていないのだろう。
声をかけるか、そっとしておくべきか。
頭の中をぐるぐると巡らせたが、毎日おはようを言うというマイルールを守るため、余計なことは言わずにおはようだけ言うことに決めた。
意を決して私は立ち上がり、影山くんの席の前に立った。
「影山くん、おはよう!」
そういうと影山くんは少し間を空けて言った。
「………おう」
最近の影山くんはいつも気まずそうにしていた。
しかし今日はいつも以上に覇気がなく、その姿にこちらまで心を痛めてしまう。
影山くんはポツリと呟いた。
「……昨日は悪かった」
何を言っているのだろうか。
「え?」
「つまんねーもん見せた」
ぽつりぽつりと影山くんから溢れる言葉に、悔しさや不甲斐なさが籠っているのがわかる。
それでも
「…なんで謝ってるの?」
何故、影山くんに謝罪をされているのか私には分からなかった。
「………」
「………」
返す言葉を探す影山くんと、返ってくる言葉を待つ私。
お互いに黙り合ってしまい、しばらく沈黙の時間が続いた。
2人の沈黙を破ったのは、朝を知らせるチャイムの音だった。