第18章 青葉城西
「………」
「………」
出入口についたので解散すればいいものの、離れ難いと思ってしまった私はなかなか後ろを向くことが出来なかった。
沈黙を破るため、私は口を開いた。
「……あの、影山くん!送ってくれてありがとう!
試合頑張ってね!!応援してるね!」
そういうと影山くんは満足気に口角を上げた。
「おう、ありがとな。」
影山くんは元いた場所へ走っていった。
…………。
…………………やばい。やばすぎる。
少しの時間だったけれど、影山くんに会えた。
少しの距離だったけれど、影山くんの横に並んだ。
いつもより余計にキラキラして見えたのは気のせいだろうか。
影山くんの「ありがとな。」が何度も何度も脳内に再生される。
しかもあの笑顔付きで。
ドクンドクンと、今さらになって心臓がうるさい。
いや、正しくはドドドドドドかもしれない。
心臓の音が落ち着くまで、私はしばらくその場から動くことが出来なかった。
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少し経つと、[今どこにいる?]と友人から連絡があった。
きっと及川さんもウォーミングアップを始め、ファンの子達は応援の準備をするためにいなくなったのだろう。
自分の今いる場所をメールで伝え、その場で友人と合流した。
「はぁ〜及川さんかっこよかったなぁ〜」
幸せそうな顔でそういう友人に苦笑いしながら私は言った。
「これから試合なのにもう満足気じゃん」
「あああー!試合楽しみ!1秒たりとも見逃したくないっ!」
「じゃあトイレも先に済ましておいた方がいいね!」
「たしかに!天才!」
私の提案に賛成した友人が用を足すため、観客席に行く前に御手洗に寄ることにした。
「は行かないの?」
「私はさっき済ましちゃったから外で待ってるね!」
そう言うと友人は「わかった!そこで待ってて」とトイレに向かっていった。
1人体育館にぽつんと残された私は、携帯電話をいじりながら待っていた。
影山くんかっこよかったな、なんて呑気なことを思う私はこの後起こる出来事を全く想像していなかった。
「ちゃんっ」
「ひゃっ!」
驚いて顔を上げると、今日1番会いたくないと思っていた人が立っていた。