第16章 雨音
「おはよっ」
「……ウス」
もう当たり前になりつつもある影山くんとのこの微妙な距離。
この関係を修復する勇気は今の私にはなく、挨拶をするだけで精一杯だった。
ジメジメとした教室の中で授業を終えた汐香は、お昼ご飯を食べようと仁花の元へと向かっていた。
キュッキュッキュッ
進む足に合わせて足音が響く。
最近の自分の気持ちとは反対に、足音だけは意気揚々と鳴っている。
校舎の外では空は6月らしい深い青で、雲は雨を降らしている。
ザーザーと鳴り続ける外を見て、外の天気が雨だから自分も気持ちが下がるんだと、雨音を不快に思った私は突拍子もないことを思い付いた。
そうだ、雨音を足音で消してみよう!
自分の世界に入り込んだ私は、足音で雨音を消すために自分の足音に耳を傾けた。
キュッキュッキュッ
自分に合わせて鳴る足音が段々と面白くなってきた私は、歩くテンポを変えてみよう、歩き方を変えてみよう、と、1人で意気揚々と足音を鳴らしていた。
キュッキュッキュッ
キュキュキュッ
キューッキューッキューッ……
また1歩踏み出そうとした時、進行方向から声が降ってきた。
「さん、何してるの?」