第9章 縁談
「——手を振り払え」
「え?」
「俺の手は血まみれだ。お前が欲しい幸せは、俺とは掴めない。…だから、この手を払いのけろ」
「光秀、さん…」
私はその手を掴んで、握りしめた。
「私があなたを振り払われないって知ってるくせに…どうしてそんなこと言うんですか?」
光秀さんは、何も言わず私をただ見つめ返した。
「私はあなたがいてくれたら、それだけで幸せなんです。わかってるくせに」
私が強く握ると、光秀さんの手がゆっくりと重ねられた。
「…いいのか?それで」
「いいんです。私、別に結婚なんて、したくない。何もいらない。恋仲にも、なってもらわなくていい。何も…望まないから…」
また、涙が溢れてしまう。
「このまま、側にいさせてください…っ」
言い終わらないうちに、光秀さんに強く抱きしめられた。
「馬鹿だな…こんな男を選ぶとは」
ひっくひっく、私は泣きじゃくりながら、光秀さんの背中を抱きしめた。
「…そのように泣くと、また化粧が取れるぞ。せっかく綺麗にしてやったのに」
「いいんです。光秀さんだけ、綺麗な私を知ってくれているなら」
そう言うと、光秀さんがふっと笑った。
「…あまり俺を喜ばすな」
私を覗き込み、指先で涙を拭う。
「とても綺麗だ…」
そう微笑むと、優しいキスを落としてくれた。
………