第8章 恋仲になりまして
〈光秀目線〉
廊下の角を曲がったところで、
小さく息を吐いた。
——危ないな。
あのまま、もう少し長くあの場にいたら、
顔に出ていたかもしれんな。
わずかに口元を緩める。
赤くなって、言葉もまともに返せない様子。
昨夜とは別人のようだ。
「……可愛いことをする」
思い出して、くすりと笑う。
だが。
ああいう顔を、人前でされては困る。
…気づかれる
恋仲であることは、秘密。
それはあの娘の望みでもある。
ならば——
こちらも、それに合わせるまで。
だが。
そう思い、足を止める。
ふと、振り返りたくなる衝動を抑えながら。
少し期待していたのか。
…葉月の名残惜しそうな顔を?
…引き止める言葉を?
何もなかった。
ただ、立ち尽くしていただけ。
「……焦れさせるな」
小さく呟く。
どちらが、かは——分からない。