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イケメン戦国《私だけを囲うひと》

第8章 恋仲になりまして


………

昨夜のことが、夢みたいだった。
触れられた温度も、声も、全部。
でも確かにあれは現実で——

「……っ」

思い出しただけで、顔が熱くなる。
ふう、と息を吐いて胸を抑えた。
…落ち着かなきゃ。

こんな顔で廊下を歩いていたら、絶対に怪しまれる。
胸を軽く叩いてから顔を上げた、その時だった。

「……あ」

視界の先に、見慣れた姿。

「光秀さん…」

思わず足が止まる。
昨夜のことが一気に蘇る。

抱き寄せられたことも、
あの距離も、
あの声も——

どうしよう。
どんな顔をすればいいのか、わからない。
逃げるべきか、声をかけるべきか。

迷っているうちに、

「おはよう」

先に声をかけられた。
いつも通りの声で。

「……え?」

思わず、間の抜けた声が出る。

「どうした。顔が赤いな」

「なっ…!」

一歩、近づいてくる。
でもその距離は、昨日とは違う。
ちゃんと“人前の距離”。

「熱でもあるのか?」

「な、ないです!」

慌てて否定すると、

「そうか」

それだけ。
本当に、それだけだった。

「……」

一瞬、言葉を待ってしまう自分がいた。
でも、何も続かない。

「では、失礼する」

軽く頭を下げて、
そのまま通り過ぎていく。

「……え」

思わず、振り返る。
呼び止めることもできず、
ただ、その背中を見送るしかなかった。

なに、それ…
昨日あんなに——

あんなに近くにいたのに。
まるで何もなかったみたいに。

やっぱり、夢だったの…?
そんな考えがよぎって、胸が、じわりと痛む。




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