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一作目 吉川詩音

第1章 本編


「わたしは…自分の曲で、一番大切な人を、
不幸にしてしまった。
わたしは作曲家だった、お父さんがいるの、
お父さんは、自分の曲で沢山の人を幸せにしたいって、
思って、ずっと頑張ってきた。
わたしはお父さんみたいになりたくて、
曲を作るようになった。
でも、私の曲がお父さんを追いつめた。
ずっと、苦しんでいた。
お父さんの作る曲は、古くて、受け入れられないって…
わたしは、それに気づかないで、
無理して笑っているお父さんに、
自分が作った曲を聴かせた。
それが、お父さんを余計に、追いつめた。
自分には、こんな曲は作れないって…思わせた。
お父さんは絶望して、もう曲は作れなくなった」

「それは…奏ちゃんのせいなの?」

「わたしのせいだよ、一番大切な音楽と、未来を奪った。
だから、どうしようもないくらい、消えたくなった。
でも、お父さんは、わたしに曲を作り続けるんだよ、
って、言って、だから、わたしは…
誰かを救うために、曲を作らないといけないって、
思って、生きている。
どれだけ絶望しても、曲を作らないといけないって、
思うようになったんだ…」

「…」

「だから、わかるよ、まふゆの気持ち、
まふゆと少し違うかもしれないけど…」

「そう…奏は、お父さんに呪われているんだね」

「…」

「消せない呪いなんて、可哀想」

「まふゆ…奏に、今すぐ謝れ!
奏が、どれだけ苦労して曲を
作ったか、わからないのか!?
この子は、寝る間も惜しんで、
まふゆちゃんを救いたい一心で、
作ったんだ!最初から決めつけるなよ…!」

「詩音くんって、幼稚な人だね、
そうやって、感情に任せるから、困るんだよ」

「まふゆちゃんを救えないのか…」

「でも、私は奏の呪いや、詩音くんのことなんて、
どうでもいい。
そんなものに、私を巻き込まないで、
奏は自分が救われたいから、
わたしを救おうとしているだけ、
必死になって、悪あがきをしているだけ、
そんなの、お互い、苦しいだけじゃない。
奏も本当は、消えたいんだから…」

「それは違う…」

「は?」

「まふゆに…わたしの曲が届いたって、知ったから、
だから、可能性が無くても、わたしの曲で、
まふゆを救いたい、絶対に救いたい。
例え、それが呪いだったとしても」

奏は呪いに立ち向かい、
まふゆを救おうと、自分の意思で語るのだった。
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