第9章 innocent@忍足侑士 ❦
ドライヤーを片付けながら、部屋行く?と視線を向けた侑士に頷く。
「散らかっとらんとは、思うけど...」
「おじゃましまーす」
メタルラックで作られた本棚にはぎっしりと小説や図鑑。
デスクトップPCが置かれたデスクの上も片付いていて、楽にしとってええよ、と持ってきた自分と紫雨の制服をラックのハンガーに掛ける侑士。
「本、たくさんあるね」
「映画見に行くと、つい原作買ってまうんよな」
「好きなんだね」
本棚の文庫本には、ストーリーを把握しているタイトルもいくつかあった。
(これ知ってるな)とラインナップを眺めていると、背中を温かな体温で包まれ、遠慮がちにお腹の前で組まれた手に触れる。
「ええ匂いする」
「シャンプー、おんなじやつだよ?」
ゆっくりと息を吸う侑士の体の動きがわかる程の距離に、鼓動が強く鳴る。
ギュッ、と抱き寄せられ、少しふらつくように背後の侑士にぶつかる。
左頬に触れる右手に顔だけ振り向くと、覗き込むようした侑士の唇に唇を塞がれる。
離れた唇に少し湿った吐息がまとわりついた。
「今やったら、『やっぱ無し』言うたら、止まれるで」
「言わなかったら、もう、止まらない?」
せやね、と言った侑士に向き直って抱きつく。
「もう一回、キスして」
「一回しかアカンの?」
頬や首を撫でながら、何度も唇を食む侑士。
「ん」
目を閉じた紫雨の頬を撫でながら、指先で僅かに耳を擽る。
「んっ」
「こしょばい?」
堪忍ね、と笑った侑士の首元を擽ってみる。
「ん?」
「効かないっ!?」
「くすぐられるん、あんま効かへんのよなぁ」
「むぅ」
恨めしく見上げる笑顔に、背伸びをして不意打ちにキスをする。
「ふふ、ちゅーしちゃった」
「ちゅーされてもうたな」
額を突き合わせて笑い合い、そのままベッドに腰掛けた侑士の膝の上に乗る。
「紫雨は、くっつくん好きやなぁ」
「嫌?」
「そんな事あらへんで。
けど、甘えたいだけなんか誘われとるんか、わからんのよなぁ」
「誘っ、ては、ない、よ?」
「疑問形なんや」
つん、と鼻先をぶつけ合う。
「怖ない?」
「...うん。」
「ホンマは?」
んー?と侑士の肩に腕をかけ、彼の首の裏で手を組む。
「緊張してる、かな?」
「そうか」
またキスをする侑士に、目を閉じた。