第10章 S/F/L@忍足侑士
週末。
会社を出たら、駅前の大通りへ向かう。
マナーモードを解除した携帯に、メッセージが届いた。
仕事、終わった?
即、返信の入力をする。
終わったよ
どこにいるの?と入力しようとすると、隣の車道の最左車線を走って行った1台のセダンが、少し先でハザードをつけて止まった。
メッセージ画面を消して、小走りに駆け寄る。
運転席から降りた姿に、口角が上がる。
「こんばんは、侑士さん」
「こんばんは。
仕事、お疲れさん」
「侑士さんも、お疲れ様です」
どーぞ、と少し仰々しい仕草で助手席の扉を開けた彼。
「お邪魔しまーす」
「閉めるで」
閉められた扉のサイドウィンドからフロントガラスへ、車の前を回る彼を追いかける。
「どないしよか?」
「侑士さんの部屋がいいなっ
映画見たい」
「ええよ。
夜、どないしよか?」
「わがまま言ってもいい?」
「ええよ」
「侑士さんのご飯が食べたいっ」
そしたら買い物からやなぁ、とハンドルを握る彼を見る。
シフトレバーをドライブに入れた手が、レバーから離れる前に掴んだ。
「紫雨?」
シートベルトをかける前に、少し、身を乗り出して、ヒゲの剃り残し一つない頬にキスをする。
「あ、キスマークついちゃった」
グロスがわずかに付いた彼の頬。
今度は、拭おうとした手を掴んだ彼が身を乗り出す。
「んっ!」
顔を埋めた首筋を舐められ、ビクッ、と目を閉じる。
「ぁ」
ちゅ、と最後に小さく吸い付かれた。
「キスマーク、つけてもた」
対向車のライトに照らされた彼が、いたずらに笑った。
end