第9章 innocent@忍足侑士 ❦
侑士と、姉のお宮参りや七五三、小学校の入学式の写真などがたくさん飾ってあり、愛されてるなぁ、とそれらを眺めていると、玄関が開く音。
「姉ちゃん?」
お姉さん、と玄関に繋がる扉を見る。
「ただいまぁ、っと」
「こんばんは。お邪魔しています」
扉を開け、こんばんは、と大学生らしきお姉さんが微笑んだ。
「帰らへんのとちゃうかったん?」
「今から出るんや
えらいかわいらし子連れ込んでるやん」
「連れ込んだんちゃうわっ!
俺ん彼女。紫雨」
「はじめまして」
はじめましてぇ、と落ち着いた明るい声の彼女に安堵する。
「今日、パパもママもいてへんからねぇ」
「すみません、ご両親が不在の時に、」
「ああ、ええよええよ。
邪魔して堪忍ね、すぐ出るさかい」
大きめのかばんに、ポーチやヘアアイロンを投げ込むと、ええっと、と支度をする侑士の姉。
「紫雨ちゃん、ゆうちゃんこと、よろしゅうね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ほなねぇ、と鞄を持ってリビングを出ていった。
「旅行?」
「いや、彼氏んとこやろ」
「大学生さん?」
「せやで。4つ上や」
「似てるね、お姉さんと」
「そうか?」
あんま言われへん、と、お姉さんが鞄から出してしまい忘れたであろうシャツを拾い上げ、軽く畳んでチェストに置く侑士。
「お姉さんもいないから、今日だったの?」
侑士の袖を指先でつまみ、見上げる。
「...姉ちゃんおらんのは、たまたまや。
オトンとオカンいてへんから、どっか行くやろとは思っとったけど」
「半分、確信犯?」
「9割」
「ほとんどじゃん」
クスクスと笑って額を侑士の腕に当てる。
「紫雨」
ん?と見上げると、する、と頬を撫でる指先に、侑士を見つめる。
ゆっくりと、重なった唇。
優しく腕を引かれ、ピタリと胸を重ね合わせる。
幾度か角度を変えて繰り返されたキスが終わると、極至近距離の侑士から、恥ずかしさで視線をそらす。
「そう言えば、今日、学校でキスしなかったね」
いつもなら、彼が好きな恋愛小説のように、昼休みや放課後に、交友棟と体育館の間や部室棟と教室棟の間でキスをするのに。
「止まらへんようなるからな」
「なにが?」
「それ、聞くか?」
えー?と苦笑いする侑士に、笑ってごまかした。
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