第7章 She is pearl of me 25.8(裏)
穏やかな脈動に変わっても変わらず温かいものに、うと、と目を瞬かせる。
「マコト?」
呼ばれているのは分かっていたが、ん、と返事とも言えない音を出す。
よしよし、と撫でられる頭に、急激に瞼が重くなった。
「ん、んと...お話、する?」
ピロートーク?だっけ?とあやふやな意識のまま、脈絡も無く話す。
「ええよ、辛いやろ」
「ううん、だい、じょーぶ」
「呂律、回ってへんよ」
「ろ、れつ...呂律、うん。言えるよ」
何度も瞬きをするごとに、語尾はしぼんでいく。
「おらんよぉなったりせぇへんから。
寝ぇや。ギューてしといたるから」
体、だるいんやろ、と髪にキスをされて背中を撫でられると、自分の意識がどこにあるのかもわからなくなった。
✜
早く、強かった心音が落ち着くと、ふう、と深く息を吐く。
すやすやと寝息を立て始めた真珠の額に滲んだ汗を唇で拭う。
真珠を起こさぬようにティッシュに手を伸ばした。
後処理をして、裸の真珠に布団をかけてやる。
疲労感と言うよりも、だるさが残る体を横たえて、乱れた真珠の髪を撫でる。
しばらくそうしていると、ふと、頭に、前に読んだ小説の一節が浮かんできた。
-滑(なめ)らかだとか滑(すべ)らかだとか。
実際に触れた妻(おんな)の肌はそうでは無く、ただ、ひたすらに肉肉しかった。
皮膚の下にある脂肪と僅かな筋肉。 それをグッ、と押し込めば、その奥の血管を駆け巡るいのちまでもを、この掌につかむことができた-
髪を撫でていた手を、細い二の腕に当てる。
爪を立てないように指を這わせた真珠の肌は、なめらかだしすべらかだった。
ふにふにと柔らかい二の腕を揉むと、微かに冷たい。
肉肉しさは感じなかったが、確かに皮膚の下の女性特有の脂肪と筋肉を感じた。
わずかに指が食い込むほどに握ると、ハッとした。
「いのちまでもを、この掌につかむことができた」と言うのは、探らなくても血管の脈動が分かるほどに細い、という表現だと思っていた。
違った。
主人公がその掌につかんだのは、確かに女の「命」だ。
一瞬、頭に過ったのは、簡単に折れそうだ、ということ。
そして、その時、これが首筋だとしたら、確かに侑士は真珠の生死を手にしていただろう。
侑士の判断一つで、悶える真珠を殺すこともできた、と。
