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【文スト】触れた指先に【坂口安吾】

第1章 序章





「ひとまず場所を移したいので着いてきていただけますか?」


彼にそう言われて私は小さく頷く。

彼は大広間を出て、玄関の方へと向かっていった。
私はその後ろをついていく。


「……あの、私のことは捕まえないんですか?」
「ここに来るまでの間に何かされたんですか?」


彼の返事に驚いて「え!」と声を上げる。
私は慌てて弁明の言葉を返した。


「そんなことはないですけど……! 私も家の人間なのに私だけ何もなかったので」
「疑いのない人を理由もなく拘束したりしませんよ、聴取で十分です」


私には疑いないんだ……と思いつつ、少しホッとする。

とはいえ実家にいた間に自覚なく家業に携わったことがないとも言えない。
その中身を知らなかっただけに自分の何気ない行動が家業の一端を担っていた可能性は十分ある。

本当に何もなければいいんだけど。
そう思いながら実家を出るといつの間にか玄関前に車が停められていた。

眼鏡の男性は運転席に乗り込むと後部座席の窓を開けて「どうぞ乗ってください」と私に声をかける。

いつのまに車、用意したんだろう。
私が家に来たときは何もなかったはずだけど……。

そんなことを考えつつも私はは彼の言葉に従って、車へと乗り込んだ。


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