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【文スト】触れた指先に【坂口安吾】

第3章 弐




「そこまで気を遣ってもらうようなら私、やっぱり休みます」
「貴方がそれを気にする必要ありませんよ」


次は彼の方が首を振った。


「さっきも言いましたけどあと1年ちょっとしか学生の期間もないんですから。少なくとも今は異能特務課はそういう意向です」


そう言われてしまうと何も言えない。


「……じゃあ当日はお願いします」


小さく頭を下げる。

自分で自分の身を最低限守ることぐらい出来たらいいのに。
そう思いつつ、現状難しいことを言ってもしょうがない。


「できるだけ早めに帰れるようにしますけど無理しないでくださいね」
「倒れたら洒落になりませんし最近は程々にしてますよ」


ほんとかな、そう思いながらも確かに最近は顔色も良いしクマもない気がする。
少なくとも前よりは元気そうに見えるかもしれない。


「前がいつも以上だっただけです」


じっと見ていた私の視線を懐疑と捉えたのか、彼はそう言って苦笑した。


「他に何もなければ今度こそ帰りますね」


彼が荷物をまとめて、私の方へと会釈する。


「あ、お疲れ様です」
「いえ、ではまた明後日に」
「はい」


そんな会話をするなり彼は部屋を出て行ったのだった。



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