第1章 序章
そうして私が何も言えずにいると私を一瞥するなり眼鏡の彼が「彼らを連れて行ってください」と言葉を発した。
すると総勢30人程度の親戚一同が外へと連れ出される。
大広間から出ていく彼らからの視線が痛くて、自分が悪いわけではないと思いつつも私は目を背けた。
彼らが出ていってしまうと、大広間には私と眼鏡の男性だけが残される。
「……」
「……」
途端、無言になった空間が気まずくて仕方ない。
親戚は連れて行かれてしまったけれど私はここにいていいのかだとか、……というか出来ることなら帰っていいのかだとか。
気になることはたくさんあるけれど素性がわからない以上、何を聞いていいのかすらわからない。
そんな中で先に話を切り出したのは彼の方からだった。
「貴方にはお話を聞きたいので一緒に来ていただいていいですか?」
「それはいいですけど……」
どんな状況なのか、よくわかっていないのに答えられることなんてあるだろうか。
そう思いつつ頷く。
やっと少し話しやすくなった空気感に私は少し躊躇しながらも聞きたいことを聞いてみることにした。
「……祖父たちはどうなるんでしょうか?」
「聴取の中身次第ではありますが、恐らく牢の中になるでしょうね」
牢の中。
思ったよりもずっと重い言葉に彼らは何をしたんだろうと心中がざわつく。
「祖父たちは何をしたんですか?」
「貴方はご存知ありませんでしたか?」
「え、……はい、詳しくは知らないです」
彼は私の返答に少し考え込んだように俯くと、少ししてまた顔を上げた。