第1章 序章
一面に広がる庭を半分に区切るようにして作られた玄関までの道を歩いていると、数年ぶりの実家にやけに違和感を覚える。
その違和感の正体に気がついたのはちょうど家への扉の前に立ったときだった。
なんだか人の気配がないのだ。
実家に出入りするときには必ず出迎えしてくれるお手伝いさんの姿もなく。
門から玄関までの間、そよそよと吹いた風に木々が揺れるだけであった。
心なしか殺伐とした空気も流れている気もする。
前に実家にいたときに感じていた緊張感とはまた違う、張り詰めた空気感が伝わって、でもその理由は全くわからない。
不思議な感覚になりながらも私は少し恐る恐る引き戸を開いた。
すると見慣れた大きな玄関がそこにはあった。
靴は全て片付けられているようで下足場には誰の靴もない。
普段ならば普通のことだ。
けれど、今日は親戚が集まっているはずなわけで。
親戚の集まる日は出入りも多くなることから大抵靴は並べたままだった記憶がある。
もちろんお手伝いさんが汚れないように配慮して片付けたということも考えられなくはない。
しかしやはり親戚が来ているにしてはやはり静かすぎる。
腕時計を見れば針は15時を差していた。
私が家を出るのを渋っていたものだから少し遅い時間になってしまったのだ。
遠方の親戚はまだしも、この近辺に住む親戚たちが集まっていないとは考え難い。
やっぱり変だ。