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【文スト】触れた指先に【坂口安吾】

第2章 壱




起こさないように気をつけつつバイトに戻ろうと思ったときだった。


「……さん?」


私が起こしてしまったのか、はたまたちょうど目が覚めてしまったのか。
どちらにしても目の前の坂口さんが起きてしまったのは確かだった。


「こ、こんにちはっ」


私は慌てて会釈をする。

まさか起きるなんて思ってなかったから突然のことについあたふたしてしまう。


「起こしてすみません……」
「いえ、予定外に寝落ちていただけなので気にしないでください」


やっぱり顔色が多少良くなったとしてもだいぶ疲れているみたいだ。

こんな彼を見ていると社会人っていうのはこういうものなのだろうかと不安になる。


「今は仕事中ですか?」
「仕事の合間の仮休憩のつもりだったのでそろそろ戻ります」
「そうなんですね、……あ! ちょっとだけ時間もらえませんか?」


彼に聞くだけ聞いて、私は彼の返事を聞かずに1階へと戻る。

それから間も無くしてまた彼の元は戻れば彼は私の突拍子のない行動に少し驚いているようであった。

そんな彼にあるものを手渡す。



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