【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第14章 あなたと新たな夜明けを(上の続き)
「傑の代わりになってあげられないけど、僕なりにを大事にしていくから。」
悟くんが私のことを思ってそう言ってくれているのは分かっていて、嬉しいはずなのに、違和感を感じてしまった。
傑の代わりになってあげられない、なんて…そんな言い方しないでほしかった。
「…傑の代わりなんて要らない。」
どう伝えたらいいか分からないまま、思ったままを口に出していた。
思わず語気が強くなってしまって、悟くんも驚いた顔で私を見ている。
それでも話さずにはいられなかった。
「傑の代わりなんて、誰もなれるはずないもの。」
年子の弟である傑は物心ついた時にはもう傍にいるのが当たり前の存在で、ずっと一緒に生きてきた。
呪霊に取り憑かれやすい体質の非術師だった私を幼い頃から守ってくれて、そんな頼りない姉でも慕ってくれた。
強くて優しい、私の大好きな弟。
そんな傑の代わりになれる人なんて、今もこの先もいるはずがない。
「でも…私にとっては、悟くんだって代わりになれる人はいないのよ。」
この思いを今、悟くんに伝えたかった。
高専で出会った当初は、弟の大事な親友である悟くんを私も大切にしたいと思う気持ちで接していた。
でも、いつからかその気持ちとは別に、悟くんを一人の男性として意識していた。
悟くんは容姿も才能も強さもすべてを持っていると言っても過言ではないくらい完璧な人で、本来なら平凡な私が関わることはない雲の上の人のような存在だった。
けれど、悟くんが私を何かと気にかけて話しかけてくれるその好意に、綺麗な青色の瞳で私に向ける熱の籠ったその視線に、私の心は悟くんに惹かれざるを得なかった。
それでも、弟を思いながら呪術師として生きていくために傑の姉であることを伏せていた私は、隠し事をしている不誠実な自分では悟くんと向き合えないと、悟くんの思いも自分の思いも見て見ぬふりをしてきた。
それなのに、そうして私が本心を閉ざして壁を作っても、悟くんは理由も聞かずに私のそばにいようとしてくれた。
私と傑が姉弟であることを知った時も、私の気持ちに寄り添って、傑との最後まで見守ってくれた。
そして今、悟くんはこれまで以上に私を大事にしてくれている。
私には勿体ない人だけれど、それでも私は悟くんが好きなのだ。